配車担当のたろーです。配車の仕事って結構怖いのです。
電話ひとつで契約が成立する怖い仕事:配車
配車をやり始めた頃に、部長に言われた言葉で今でも覚えているのが、
「この仕事は電話一本で契約が成立する怖い仕事だ。契約書も無ければ、その時点での運賃も発生しない。肝に命じて仕事をするように」
といった言葉です。確かに、配車担当は相手の運送会社に電話をして、
「〇〇から▲▲まで□□万円で」
みたいな会話で仕事が成立してしまいますよね。小売業だったら、そこで料金を支払うわけですが、我々の仕事は掛けです。よくもまぁ、そんな怖いビジネスモデルが成立するなぁとよくよく考えればそう思うわけです。
ですから、配車マンの信用度というのは、一種のステータスであり、
「たろーさんが困ってるんだったら車出しますよ!」
っていうのは相手との信頼関係が高いという証拠だ、ということですね。
しかしながら、実際にはそう簡単なことでもありません。そう、そこには会社の看板という問題があるのです。
〇〇会社の配車担当たろー
フィクションです。
埼玉物流株式会社は埼玉の北部でかなり大きな力を持つ運送会社です。社長は埼玉のトラック協会で役員を歴任し、埼玉県のトラック業界では顔が広く人脈のある人物として有名です。配車担当のたろーは、小さい運送会社で乗務員をやっていましたが、たまたま納品先で知り合った埼玉物流の乗務員に誘われて、転職してきた1年目の社員です。
埼玉物流で配車をやっていた社員が、ちょうど独立してやめようとしていた所で、たろーが入社してきたため、乗務員の経験もあることから配車担当を任せてみようという社長の独断で、たろーは配車担当に任命されたのでした。
最初は新しい会社で、どんな仕事を取り扱っているのかもわからず、ただただがむしゃらに仕事をこなしていました。そして、こなしているうちにあることに気付いたのです。配車の苦労が全然ない、ということに。
というのも、埼玉物流は社長の人脈もあり荷主にかなり恵まれた会社であったのです。入ってくる仕事の単価もよく、手を使わない仕事ばかりだったので、乗務員たちにも十分な給料を支払うことができ、自車につけられない大変な仕事であっても単価がかなりいいため、傭車にすぐに振ることができました。
そんな状況ですから、新人配車マンのたろーの元には地場の運送会社からもひっきりなしに電話がかかってきます。
「たろーさん、まだうちの車あいてるんですけど、仕事無いですか?」
「たろーさんの用命通り、車2台空けてきましたよ!」
「この仕事でこんなに単価いいんですか!?ありがとうございます!」
たろーはこんな電話をいつも受けていたため、配車が楽しくて仕方なくなってきたのでした。そして、あることを思いつきます。
(こんなに配車って簡単だったら、独立してもうまくいくんじゃないか?)
そして、たろーは小さい運送会社を作り、配車担当として独立したのでした。
さて、この先待っている未来は、どんなものか?配車をやっている皆さんならよくわかりますよね。
埼玉物流の社長だからこそ回ってきていた単価のいい仕事は、もちろん新しく起こした信用がまだないたろーの会社にくるわけがありません。荷主は埼玉物流、もしくは広い人脈を持つ社長にだから安心して高単価で仕事を回していたのです。
そして、最初は埼玉物流時代に協力してくれていた地の運送会社の配車マンたちもいっぱい仕事をくれていたたろーに電話が行きますが、いままでのような単価のいい仕事などあるわけもなく、空車情報を持て余してしまう結果に。
「たろーさん、この空いてる車どうしてくれるんですか?」
「たろーさんが言うから2台あけたのに!無駄じゃないですか!」
「こんな仕事でこんな単価安いんですか?やってられないっすよ」
いつしか、たろーの会社の電話は鳴らなくなりました。会社の看板を自分の実力と勘違いしてしまった、配車担当の末路、ということです。
配車担当は謙虚でなければならない
配車担当には一部天才型の配車マンもいます。この天才配車マンは、会社の看板なんて目もくれず、ひたすら自分の信用のみを武器に戦えるツワモノです。しかし、多くの配車マンは凡人なのです。
凡人は凡人らしく、謙虚に仕事をしなければなりませんよね。結局、物語のたろーも、自惚れず、埼玉物流の配車担当として力をつけていくべきでした。せっかく恵まれた環境にいたのに、それに甘んじて自分を過大評価してしまったのが、たろーの一番のしくじりです。
でもフィクションですが、こんな配車マン、結構身近にいませんか?正直私の周りにも何人か見当たります。別の会社に行ったらおそらく通用しない…みたいな。しかし、そういう人の方が、
「こんな会社でやってられねぇから、別の会社でもう少しいい仕事しようかな」
なんて言っちゃうわけですね。批判は誰でもできます。それと正面から戦って乗り越えられた人が成長できるのです。自分の会社をくだらないと批判だけしている人が、別の会社でそれなりに評価をもらえるとは思えませんよね(批判して行動できる人はスゴイと思いますよ)。
今回はそんなよくあるお話を教訓として記事にしてみました。フィクションですからね(笑)