配車係の起業物語
配車係のたろー(@haisyaman_taro)です!
会社を経営するならば、事業もうまくいって売り上げもがっぽがっぽ入ってきて、好きなことだけやって生きていきたいものですよね。
しかし、飲食店で言えば、3年で90%は潰れているというのはよく聞く話。運送業はそこまですぐに潰れるということはないと思いますが、それでも車を借金で購入して月々の売り上げで回転させていく会社が大半であるわけですから、ちょっとでも荷主の支払いが遅れたらピンチ!という経営が多いのではないでしょうか。
今回は物語風で書いてみたいと思います。
大手企業から独立した配車マン・たろーの場合
たろーは大手物流会社で配車係を担ってきました。自車の運行から、協力会社との取扱のやりとりを日々の業務で行い、社歴としては10年。その間にかなりの売り上げをあげていました。人情味あふれる配車マンだったところから、彼を慕う協力会社も多く、中には安い運賃でも仕事を引き受けてくれる協力会社もあり、人としても好かれていたのです。
そんなたろーに、ある会社から話がありました。
「たろーさん、実はうちの会社たたむことになりまして。後継者不足ですわ。今までありがとうございました」
社長が一代でやってきた会社で、事務関係は奥さんが担っていた。乗務員たちも高齢で会社を継げる人がおらず、社長の体調が悪くなったところでたたむ決断をしたそうだ。
ここでたろーは考えた。
(今までみたいにこの会社で配車するのもいいけど、男なら一発社長として自分の力を試してみたい)
かくして、たろーは社長の会社を引き継ぐ話を進めるのであった。
最初は順調な滑り出しだったものの…
所属している会社から独立して起業すると、ひとまず今まで付き合いのあった荷主や業者に挨拶に行くたろー。
「たろーさん独立したんですね!今後とも是非よろしくお願いします!」
挨拶の時にはそう言ってくれた荷主や業者も、最初はご祝儀がわりに助けてくれたものの、御察しの通り1ヶ月もするとぱたっと連絡が途切れてしまいます。
一方で、もともと引き継ぐ前にやっていた既存の仕事というのが安くてキツイ仕事ばかり。業者も以前の会社の時のように、いい仕事の間にキツイ仕事というメリハリがあれば助けてくれるものの、キツイ仕事しかこの会社はないぞ、と思われようものなら疎遠になっていくのも当然で…。
「こんなはずしゃなかったんだけどなぁ」
たろーはポツリと呟くのだった。
人情配車だけでは人を食わせられない
「この仕事安いけど行程が合わなくて困ってるんです」
「しょうがねぇなぁ、指示書流しといて、やっとくから」
こんなやり取りをしたことがある配車マンも多いでしょう。たろーも多分にもれず、困ってる人を見過ごせないタイプであったので、ついつい男気で受けてしまいます。しかし、今の会社では、その行動は命取り。
この安くてキツイ仕事をやるのは乗務員です。乗務員にも家族がいますよね。充分な歩合も払えない安くてキツイ仕事を続けていれば、乗務員の心が離れてしまうのも必然です。
一人、また一人と乗務員が辞めていき、だんだんと資金繰りが悪化していき、乗務員に支払う給料も厳しくなってきたたろーは、ついに町の消費者金融に手を出してしまうのでした。
慕われていたのは安定的に荷物があったから?
協力会社から慕われていたと言われれば聞こえはいいですが、実際はたろーがそこそこの企業に属している配車マンであったため、それなりの金額の荷物が安定的にもらえていたからに過ぎなかったわけです。安定的な仕事はもらえる上に、無理な時は助けてくれる、そんな配車マンだったからこそ、たろーは周りの協力会社に助けてもらえてました。
ここで多少安い仕事を受けたとしても、あとで別の仕事も貰えるし、という協力会社が多かったことでしょう。
荷主からしても、安定的に荷物を運んでくれている配車マンを優遇するのは当然ですよね。しかしそれは、たろーでなくても良かったこと。彼の会社であれば問題なかったのです。ただ、たろーがその会社の配車担当であっただけ、ということですね。
売り上げと利益をしっかりと管理する
大きい会社も小さい会社も、売り上げと利益をあげるのは同じですが、違うのは企業体力です。小さい会社であれば、なおさら一回の運行で赤字の内容をいかに減らすかを考えなければなりません。
人情配車もいいですが、もらうものはしっかりもらわないと後が続きませんよね。
自分の置かれている環境をしっかりと見極め、仕事をこなしていくのが必要なんじゃないかと思います。
以前こんなツイートをしました。
取引のあった運送会社が潰れた話を聞いた。
— 配車マンたろー@配車係 (@haisyaman_taro) November 11, 2019
社長はどこかお人好しで、人情で仕事をしちゃうような人柄。
会社経営するにはちょっと正直すぎたのかな…。
この会社の社長も、この物語に出てくるような感じの人物で、心配はしていたんですよね。
そこそこの企業にいて、配車のやり方を学んでも、中小企業の資金管理ができてないと会社経営は難しいのかなと思いました。
私も以前は企業して独立しても面白いかな?と思ったことがありましたが、今の私のポジションは物語のたろーと同じような感じ。私自身に強烈な魅力があるわけではありません(多少は助けてくれる配車マンはいると思いますけど笑)。ちょっと独立となると考えてしまいますよね。
もし独立を考えている配車係の方がいらっしゃったら、綿密な計画を立ててから実行することをお勧めします。なんとなくで企業して、痛い目を見ている人を結構見てきてますからね…。
(この物語はほぼフィクションです)